【読書】『ボラード病』吉村萬壱 を読んだ

【あらすじ/ポイント】

ある女性の少女時代の手記。明らかに東日本大震災後の『絆』に閉塞された世の中を批評したようなディストピア小説。(ディストピア小説が何かは知らないけれど。。。)時々子供がなぜか死に、互いに集団性を監視しあい、自分たちを称賛することを強いる「海塚市」の生活を振り返る。

 

【感想】

全編にわたり、嫌な感じ、が付きまとう。救われないと感じさせつつ、『決定的な何か』もない。常に嫌な感じ、である。でもそれは閉塞した世の中をうまく表している。みんな苦悩しながら、従うしかないのか?互いに監視しあい、実はお互いおかしいと思いながらもだれも止められない。女性は母親も同じなのだ、と気づきながら、母親は同じ傾向を持つであろう娘も救えない。
大人になった少女が監禁されて過ごす島の名前を女性が名付けているのが印象的だった。「明日島」。『きっとこの島では、何一つ前に進まず、何一つ実現しないのです。...今日は駄目でも、取り敢えず明日がある。勿論明日というのは、希望などではありません。今日じゃないというだけの、絶望的な見通しに過ぎません。』これほどネガティブな明日という響きを聞いたことが無い。でも、今の日本(特に政治)はこんな状態なのでは、と背筋が凍るような思いがした。

妻はもっと明るく快活な小説が読みたいと言う。私は、心にえぐるような小説は(それがなぜ心をえぐるのかを考えることが)好きです。

【星】☆5